協会 小林修平理事長 挨拶
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【プロフィール】
元国立健康・栄養研究所所長
元和洋女子大学家政学部健康栄養学科 学科長
元政府審議会委員
元国家試験委員(介護福祉士認定試験副委員長、管理栄養士国家試験委員長)
元国際栄養科学連合理事
NPO法人日本国際生命科学協会副理事長
人間総合科学大学人間科学部健康栄養学科 学科長
21世紀の現代社会を生きる上での最大の関心事の1つが健康ですが、わが国では高齢化と生活習慣病という2つの大きな問題に対応を迫られています。その鍵は日常の食生活であろうことは疑いがございません。
教育分野でも知育、徳育、体育に加え、食育の重要性がますます注目されています。平成17年7月に「食育基本法」が施行されて以降、基本計画に基づいて、農林水産省、文部科学省、厚生労働省の三省、あるいは地域における団体等が各々でさまざまな施策を展開しております。
しかし、現代の食の問題はより複雑化し、且つ複合的でさまざまな要素が混在しており、その解決のためには各省庁の壁を取り払い、お互いの連携を図り、協力する事も必要です。
最も大切な事は、食育基本法が目的とするところの、国民が生涯にわたって健康で豊かな人間性を育むために、今こそ国民一人一人が自主的に食に関する知識と食を選択する力を習得し、食育を国を挙げての国民運動として展開し、実効性を持たせる事であります。
その食育活動を普及、啓蒙する目的で当協会は2004年5月に発足、設立されました。未来を担う子どもたちをはじめ、老若男女、世代間を問わず、各家庭から地域社会に至るあらゆる機会において、食の啓蒙活動を実践し、健康な社会の基盤づくりに寄与できる皆様の活動を心から期待しております。
協会理事
NPO法人日本食育協会の活動は、会員の皆様および、理事のご協力、ご支援のもとに成り立っています。
当協会理事からの「食育の必要性と現状における、協会活動参加への期待」のメッセージです。
当協会の食育活動に、ぜひご賛同、ご協力をお願い致します。
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経歴
ニューヨークタイムズ東京支局記者、ボストン・コンサルティング・グループ研究員を経て独立。
欧米諸国の食育とウェルネス事情の取材、新聞・雑誌への寄稿、テレビ・ラジオ出演、全国での講演が主な仕事。
内閣府「食育推進会議」専門委員、その他、厚生労働省、農林水産省、文部科学省の食や健康教育に関する委員、2014年第1回食育文化功労賞受賞。
NPO法人日本食育協会理事。食育推進団体イートライトジャパン代表理事。
著書に「今こそ食育を!」(法研)「漢字で食育」(求龍堂)/「ウェルネス・育自活路法」(イートライトジャパン)/「みんなで食育」(全国農業会議所)「楽しく食育」(潮出版社)他多数。
メッセージ
「食育は未来への健康投資」
食は命。食べ方は生き方。料理は心。味わう、楽しむ、もてなすは文化です。
食について考え、学び、実践する食育推進基本計画が2006年4月から施行され、食育の名のもと、家庭、学校、農協、地方自治体、メディア、企業、NPO、流通業界が結集し、こぞって活動に取り組み始めました。
健康づくり生涯学習「食育」は栄養バランスに配慮し、おいしく楽しく食べて、スクスク元気に育つ運動。自分の健康は自分で守り育て、健全な社会をつくる土台であり、最良の予防医学。食育はまた農業、環境、健康、文化、生活の質すべてに直結する新公共政策です。
20世紀はマネービル、コンクリート・ビルの世紀でした。「人こそ財産」の21世紀は、元気、健康、ニコニコ、幸せビルディングの時代です。実情は病気保険である現在の健康保険を、文字通り健康づくりの元気保険に変えてゆくのが食育活動の基本姿勢です。
人生100年四世代社会のいま、人は食で浮かび食で沈みます。食育は体育・知育・才育・徳育の分母。自分自身の賞味期限と健康寿命をのばす自己管理力。毎日の食が選べる人は人生が選べます。買い物は選挙、お金・紙幣は投票用紙です。
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経歴
社団法人 調理技術技能センター理事長
内閣府「食育推進評価専門委員会」専門委員。
1939年岐阜県生まれ。’64年に大学医学部を卒業し’65年に医師国家試験合格。岐阜県高山保健所勤務以後、厚生省医務局国立療養所課、在インドネシア日本大使館、厚生省公衆衛生局地域保健課などを経て平成元年に厚生省健康政策局計画課長、厚生省大臣官房厚生科学課長、環境庁企画調整局環境保健部長、環境庁大気保全局長、国立医療・病院管理研究所長、(財)厚生年金事業振興団常務理事を歴任した。現在は社団法人 日本医業経営コンサルタント協会会長などの要職を務める。
メッセージ
「食育の必要性と現状における協会活動参加への期待」
「その国の若者がどのようなものを食べているかを見れば、その国の未来がわかる」ということわざがフランスにあります。日本の将来を担うべき若者の現代の食生活はいかがなものでしょうか。加工食品の普及とともに料理の素材も知らない人たちが増加し、食べ物に対する感謝の念や理解を深めることへの阻害要因ともなっています。
健康増進の観点からも高く評価されている「日本型の食生活」ですが、近年、家庭におけるわが国伝統の食文化は崩壊の危機にあります。また、食の欧米化、飽食化を背景とした食習慣から生じる、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病に関わる国民医療費も医療費全体のほぼ3分の1にものぼっています。医療費を抑制しようとすれば、まずこの生活習慣病対策の強化が必要となります。
正しい食生活の知識の普及と日々の食生活の見直しにより、健全で豊かな食生活を実践し、伝統ある優れた食文化を継承してゆくといった、食育活動における皆様の活躍に大いに期待を寄せております。
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経歴
社団法人 日本栄養士会参与
1943年生まれ、1966年に東京都衛生局公衆衛生部を皮切りに、厚生省栄養課調査係長、同栄養専門官、同看護研修研究センター講師、女子栄養大学教授、同栄養科学専攻学科長等を経て、2004年(社)日本栄養士会常務理事、2006年同 専務理事の要職を努め、現在は 同 参与。この間、厚生省「介護福祉国家試験」「管理栄養士国家試験」等の委員及び自治医科大学、聖徳大学大学院、東京家政学院大学、川村学園女子大学等の講師を歴任。2011年には、新潟県立大学健康栄養学部教授に就任。2009年7月当協会理事に就任。
メッセージ
「人々の絆や連帯の核に食を……。」
"栄養のあるもの"をバランスよく食べようと言う事が食育において取り上げられる。しかし これだけで人びとは本当に豊かで健康的な食生活を送る事が出来るものだろうか。食事の真の 意味や生活における食の役割とは、いったい何だろうか。父母や兄弟姉妹、祖父母と異なる世代 が同一のテーブルを囲み、一緒に食事をしていた時代は、いわゆる"同じ釜の飯を食べる"習慣 が根付き、しかも、それぞれの世代の好みや健康状態に合った様々な料理が食卓に並んでいた。 時には、子どもがおじいちゃんの食べているものに興味を示し、それを食したりする事で色々な 食べ物を味わう体験を重ねる日常生活を送っていた。
このように自分以外の者が、美味しそうに食べているのを見て普段あまり食べない料理に箸を 伸ばすと言ったように、自然に食への関心が芽生え深められ、いつの間にか苦手であった食べ物 も食べられるようになった。食卓には、いつも豊かな学びの世界が広がり、特に子どもたちにと っては、宝の山が輝いているように見えているはずである。大人たちの動作ひとつひとつに好奇 心を持ち、食べ方やマナーなども身に付けていく。 食育活動を推進する人びとは、今一度、食の原点に立って、食の本当の姿を見つめなおしてほ しい、そして、現代社会においてバラバラになってしまった家族や近隣の人びととの絆や連帯感 を高める機会を食を通して再構築してほしい。自らも、これらの食育活動に自然体で臨みたいと 思う。
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経歴
日本体育大学 児童スポーツ教育学部 教授
東京医科歯科大学大学院医学系研究科保健衛生学研究科
博士後期課程修了 博士(看護学)
日本乳幼児医学・心理学学会、日本女性心身医学会(理事)、日本看護科学学会、日本助産学会、乳幼児保健学会(評議員) に所属
メッセージ
「食育の必要性と現状における協会活動参加への期待」
周産期の母子保健・支援の立場からは、食育は生まれる前の胎児の時から既にスタートしていると考えられます。例えば、現在、産科・小児科領域で問題となっている低出生体重児の増加傾向は、多胎児や妊娠中の喫煙者の増加とともに栄養摂取の制限があると言われています。低出生体重児は、母親の栄養摂取が適切かどうかなど胎児の胎内環境と大きく関係しているのです。近年、日本の若い女性の体型がやせ型になっていますが、スリム願望が極端になると将来子どもを産み育てる女性のみならずお腹の中の胎児にも影響を与えてしまうことになります。
赤ちゃんが初めて口にするものは何ですかと問うと、多くの人は母乳と答えるでしょう。しかし、妊娠初期の頃から、既にお母さんの子宮の中で胎児は羊水を飲むという行為を始めているのです。さらに驚かされるのは、胎児の味覚は非常に発達しており羊水に味をつけるという実験では胎児に様々な反応が見られることが明らかになっています。このように羊水を通して味覚が形成されるなど、胎児の頃から食べる(飲む)基礎が育まれることからも、妊娠中の母親の食生活がいかに重要であるかが理解できます。
将来を担う子どもと、子どもを育む大人自身の健康を支える健全な食生活が社会に浸透していけますよう、母子保健という立場から皆様とともに食育活動に取り組んでまいりたいと思います。
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経歴
日本の栄養学者。鎌倉女子大学家政学部管理栄養士学科教授・学科長。
東京農業大学大学院農学研究科食品栄養学専攻修士課程修了/農学修士/博士(医学)
管理栄養士国家試験委員、独立行政法人労働者健康福祉機構東京産業保健推進センター特別相談員、鎌倉食育推進会議副会長などを歴任。現在、日本栄養・食糧学会、日本栄養改善学会、日本公衆衛生学会、日本民族衛生学会、日本健康教育学会、日本未病システム学会、日本行動計量学会に所属
メッセージ
「食育の必要性と現状における協会活動参加への期待」
食育基本法が施行されて既に8年が経過しました。「食育」も単に言葉を周知する段階から実践段階に入りました。
食育は,体育・知育・徳育を下支えする根の部分にあたります。食育により培われた食事選択能力は健全な食生活を実践し,生きる力,豊かな人間性を育み,さらには,自己実現を図ります。食育のアプローチは十人十色,ライフステージによっても変化します。食育に完結はなく,1人ひとりが生涯にわたり育み続けなければならないものです。
子どもの頃に家庭で受けた食育は,その後の食に対する姿勢を左右します。家庭における食育の原点は共食であり,その意義は,コミュニケーションだけではありません。食事を通じて五感を鍛え,様々な知識を学ぶことが出来ます。共食の機会の減少のためか,最近の若い世代は食体験が乏しく感じられます。子どもの頃から、作り,味わう体験をし,自分の健康を守る知恵を身につけることが望まれます。
食に関する情報が氾濫する現在,情報を取捨選択することは難しい状況もあります。協会活動を通じて,多くの方々と共に1人ひとりにあった食育の取り組みのあり方を考えていきたいと思います。
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経歴
1982年九州大学薬学部卒業、九州大学大学院薬学研究科修士課程・博士課程進学。1987年薬学博士学位取得。1988年4月より1995年3月まで国立病院九州がんセンターに臨床研究員として勤務。1995年4月より2005年1月まで九州大学大学院薬学研究院薬効解析学分野助手として勤務、その間2003年に米国コロンビア大学にGuest Professorとして留学。2005年2月より九州大学九州大学大学院薬学研究院臨床育薬学分野准教授、現在に至る。
メッセージ
食の重要性を再認識し、食育協会の活動を啓発していきましょう!
まだまだCovidの収束が見えません。その感染が拡大し、緊急事態宣言が出された当時、岩手県はずっと感染者がゼロでしたし、依然としてそんなに多くありません。感染者人数の分布を見ていると、ご飯を食べてなさそうな都会に感染者が多いのではないかと思いました。もちろん人混みも要因ではありますが、都会は食生活も欧米化しています。食生活の欧米化はがんをはじめとして、さまざまな難治性疾患を増加させることが知られています。そこで、和食の中心となる米の消費量が各都道府県別に出ているデータはないかと調べてみました。すると「さとふる」が朝食でご飯を食べる量を都道府県別に出してくれていました。それを見て、私自身が驚きました。なんと岩手県がトップだったのです。そして、感染者が少ないところは朝食でご飯をしっかり食べ、感染者が多いところはあまり食べないことがわかったのです。これは世界の感染者分布でも共通していました。欧米に比べて米を主食とするアジアは、極端に感染者や死者が少ないのです。日本は欧米から感染者や死者が少ないことで驚かれていますが、実はアジアでは10万人あたりの死者数が3番目、しかも中国より20倍以上多いという、とても自慢できる状況ではないのです。こんなことを講演で話したりしていたら、なんと「米を主食とする国は感染者が少ないと」いう論文が出たのです。
このように、食育の重要性を再認識する日々です。みなさんも、食育協会とともに和食を中心とした食が大切であることを学び、啓発していきませんか。
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略歴
福岡市生まれ。農学博士。福岡県農業総合試験場、九州大学農学部附属農場、同大学院園芸学分野で、作物の品種改良や来歴解明に関する研究を行ってきた。2014年から社会問題の解決に貢献するプロフェッショナルリーダーを育成する「九州大持続可能な社会のための決断科学センター」准教授、2020年より同副センター長。NPO法人日本食育協会理事、NPO法人山口県食育協会理事、一般社団法人九州オープンユニバーシティ理事も務める。
メッセージ
食育の視点
2005年に食育基本法が成立してから16年が経とうとしていますが、世間の食育に対する関心はますます高くなっているように感じています。
食育と言えば、栄養のあるものを食べたか、健康を損なうようなものを食べなかったか、朝ごはんをちゃんと食べたかなど、食事の内容に関心が向きがちです。一方、どんなふうに食べるか、つまり「食べ方」について言及されることは少ないのではないでしょうか。
- 例えば、右に掲載した写真を見てください。私が担当している大学1年生向けの全学講義「自炊塾」の受講生が、受講し始めた頃の食事風景を写したものです。本協会に所属する人なら、飯碗と汁椀の配置が左右逆であることに違和感を感じるでしょう。このように配膳に気を配らない学生は、今、少なくありません。
配膳への無頓着以外にも、最近は、箸をちゃんと持てない人、洗うのが面倒だからと皿を使わず、調理した料理を鍋やフライパンのまま、あるいは購入した惣菜を皿に盛り替えずにパックのまま食卓に置いて食べる人も見受けられます。包丁を手際よく使える人も少なくなりました。インスタント、レトルト、冷凍食品、ファストフードが普及し、自ら調理せずとも食べられる環境が当たり前になってしまったことが少なからず影響しているでしょう。
私たち人間と同じように、包丁を使って調理し、箸や皿を使い、配膳をして食べる動物が他にいるのか。小・中学生、高校生向けの講演で、私はしばしば問いかけます。人間らしく食べる行為。それを私たちは「食文化」と言います。文化は動物には作れません。人間らしい食べ方を忘れてしまったり、できなくなったとき、私たちの食事は動物が餌を食べるのと変わりなくなるのではないでしょうか。
正しい配膳や箸の持ち方、美しい盛り付け、手際よい包丁さばき。それらは日々の食生活の中で繰り返しながら身に付けていくものです。ずっとしてこなかった人にはいきなりできませんし、できないまま大人になった人は、次の世代に伝えることができません。食文化は、その食にまつわるあらゆる営みを自分でできる人が育って初めて次世代へと受け継がれるのです。
大切な我が国の食文化に関する知識を授けるだけでなく、食べ方もちゃんと身に付けた人を育てる。和食を本当の遺産にするために、そんな取り組みを協会の皆さんとやっていきたいと思います。
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略歴
1950年、兵庫県生まれ。1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授、京都大学教養部助教授、カロリンスカ医学研究所国際研究員(スウェーデン政府給費留学)、米国モンタナ大学生命科学部客員教授等を経て1992年、京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年から京都大学名誉教授、中京大学大学院客員教授、現在に至る。専門は応用生理学とスポーツ医学。
メッセージ
アメリカでも日本同様に国民健康栄養調査がなされていますが、20年前位から地域、人種、年齢、運動、喫煙歴等々を統計的に補正してテロメア(細胞の生物学的年齢を表す「命のロウソク」)を基準に肥満度、運動習慣、栄養などがこの命のロウソクに対して影響するかを大規模サンプルで調査しています。例えば、国民健康栄養調査から5768名のDNAが血液サンプルから得られた研究で、は喫煙歴(1日20本20年間)の全米男女性のテロメアは70.5配列短く、生物学的に4.5年も老化していることが明らかとなりました。また、テロメア長はBMIのレベルによっても有意に異なっており、過度の肥満成人では正常体重と比較して114.9配列短く、7年の細胞老化が示唆されています。一方、食事調査により、多数の高齢者はタンパク質の摂取不足が指摘されており、このことが加齢に伴う徐脂肪体重(筋、骨重量)の減少に関与していることが示唆されています。最近の調査では体重当たり1.2g以上のタンパク質を摂取していても3年間で約0.5Kgも除脂肪体重が減収することが示されました。そこで、時間栄養学に基づいて、70歳の高齢者でも筋トレを行った直後に必須アミノ酸を20gサプリで摂取すれば、20代の若者とほぼ同等の筋タンパク合成率が確保できることが明らかになっています。皆様に最新の運動栄養医科学の知見をお伝えしたいと思っています。